原発推進を掲げている企業内全体主義の「連合」は、労働者のために何をしたのか?

政権交代を目指し、総評、同盟、中立労連、新産別などの再編によって1989年に結成された連合(日本労働組合総連合会:組合員680万人)、結成20年にして民主党政権が樹立することになって、当初の最大の目標は果たされたことになりますが、その結果はどうだったのでしょうか?

「格差社会」「ワーキングプア」問題などと深く関係し、労働分野での課題であった派遣労働者問題ひとつとっても、連合はきわめて消極的で、民主党も有効な策を打ち出していません。抜け穴だらけの「改正派遣法」もいまだに成立していません。一方、この間連合は原発推進政策を後押しして、福島原発の破滅的な事故があった後もその方針を変えず、民主党政権の脱原発策の足かせになっています。それどころか最近では連合の会長が、延命のためか?重い腰をあげてようやく「脱原発」に動きはじめた菅直人首相に対して「菅降ろし」に動いています。

連合の主力は大企業の企業内御用組合です。それらの組合のほとんどはユニオンショップ組合で、その組合のある企業に入社すると同時にその組合に加入します(組合費は給料から差し引かれます)。そして他の組合に入らない限りは、その企業内組合を脱退すると「解雇」になってしまいます。このようなユニオンショップ組合にあっては、組合が非管理職の全て(ただし正社員)を組織するため、組合と企業の労働協約によって社員=組合員の労働条件は否応なしに決まってゆきます。ユニオンショップ組合において、企業はその組合と合意すれば、個々の労働者の同意を必要とせず、法に抵触しない限りの労働条件の変更を行えるのです。ユニオンショップ労働組合はこのように企業の「人事管理システム」となっているため、企業内ユニオンショップ組合が存在する会社は大幅に人事・労務コストが省けます。人事管理はいわば組合が行うわけで、要は労働者が自分のお金(組合費)で企業の人事管理コストを払うということになります。

企業と一心同体となったユニオンショップ組合は閉鎖的です。その企業の利益に自らの立場をあわせるために、企業が人事コストを押さえるために導入する「非正規」労働者を組織することはほとんどありません。さらに大企業の子会社、孫会社、あるいはその企業が資本を出している関連企業には労働組合を作らないし、それらの企業の労働者を加入させるということもほとんどありません。


ユニオンショップ制は、企業による労働者の団結破壊策動から労働組合を守るものとして確立されてきたものですが、それだからこそ企業はユニオンショップを勝ち取った組合を切り崩そうとし第二組合を作ってきました。そして第二組合にテコ入れをして、これを多数派にした後はその第二組合=御用組合をユニオンショップ組合にしてきたという日本労働運動の歴史があります。このようにして成立した企業内ユニオンショップ組合は、「闘う組合=おおむね左派組合」に対抗してできた関係から「右派的イデオロギー」を持ち、同時に企業活動に対する批判は行わない組合になります(国を守り、企業を守る組合)。連合は、これらの企業内右派組合(それは労働組合の本末転倒の姿です)が多く加盟する、日本最大の労働組合団体=ナショナルセンターです。


前置きがとても長くなってしまいました。

連合、それが結成され、政権が民主党に代わり(政権交代に連合の力がどれだけ影響したかはわかりません、ただ自民党中心政治を国民が拒否したということで、連合の力などほとんど影響がないのかもしれませんが、少なくとも連合の幹部達は自分たちが政権を交代させたと思っているようです)、それで何が変わったか?

一番大きなことは、原発推進政策がさらに強められたこと(連合の歴代幹部には電力総連・東電労組出身者が名を連ねています)。

原発事故が生じて以降、連合は無策状態に陥りました(事故当初は「原発事故」の風評被害を声高に語り、誰の目にも歴代政府・東電の責任が明らかになっているいまでも、「原発の安定」としかいわない)。日本いや世界中が東電・福島原発の重大事故の推移を固唾をのんで見守っているとき、そこに22万人の組合員を持つ東電労組、その上部団体である電力総連、さらには東電労組が事務局長を出している連合は、原発事故について思考停止に陥りました。一方、原発事故処理には東電の労働者や、「協力会社」の社員、さらには全国から集められてきた作業労働者達は危険な作業を行い続けていました。

このような時に連合が行ったことはメーデーの自粛。そしてメーデー会場におけるプラカードの禁止?(原発に関わるプラカードが出るのを怖れたのでしょうか?)

日本の原発の問題が取り上げられるとき、利権が絡み合った「原発村」といわれます。また、原発推進地域では反対派を許さない状態や原発安全神話のばらまきによる住民への徹底した宣伝=意識操作があり、それは「原発ファシズム」ともいわれます。

私は、この日本の原発問題、すなわち広島・長崎を経験し、核エネルギーの暴力的姿と、放射性物質汚染をどの国よりも苦しく体験した日本人が世界でも有数の原発開発(そして輸出も狙う)、原子力依存に陥った背景には、連合に見られる企業内批判勢力の不存在、さらには大企業における全体主義的な労働組合の存在が大きく影響していると思うのです。

ものすごく不思議なこと。それはこれほどまで原発事故問題あるいは原発のあり方が問われているときに、いまだに当の電力会社の社員・従業員からの「声」がほとんど聞こえてこないことです。原発事故発生後、共同通信の取材に対して東電社員は自らの被曝料について「個人情報」として公表しませんでした。個人情報? それは「企業秘密」ということの言い換えなのでしょうか?

労使一体化のユニオンショップがある大企業は時に「企業内ファシズム」とも批判されます。このが昂じると企業内部の不法行為や製品の重大な欠陥が表に出ないで、それが重大な事故を引き起こすことがあります。そこには消費者、住民さらに結果的には働いている労働者の生活や安全よりも「企業利益」を優先する世界です。

今日6月18日の東京新聞朝刊は、福島原発で働いている人被爆問題について厚生労働省や文科省などの国の機関と、労働者の立場に立つ団体との間で交渉があったとの記事がありましたが、その主体は市民団体であり東電の労働組合ではありません。東電労組は「電力総連として東電に労働者の安全確保の申し入れをしており、改善されてきた」とのコメントを寄せていますが・・・・。そこで東電労組がいうところの「労働者」とは誰のことでしょうか? 労使一体となって被曝限度基準が例外的に緩められ続けていますが、それが東電労組の「成果」でしょうか?

電力総連・東電労組の姿は、連合を象徴していますが、連合の20年って、いったい何だったのでしょうか?連合結成以降あるいは結成当たって、「総評」系の左派的労働組合の幾つかや、「左派的」労働運動活動家が、連合に合流し、そして今日まで連合で活動していますが、連合に入った意義って何?「私たちも連合内で努力した」では、連合の現状から見て答えになりません。

少しでも日本の労働運動を憂う人は、連合を離れたらどうか? 「宮仕え」から離れれば安定した生活はできなくなるかもしれませんが、日本では安定した生活など無い労働者が多数派です。連合の破綻が明らかになった現在、連合に一縷の望みをかけて参加した良心的組合活動家は、本当の労働者の多数派に身を置いて欲しく思います。

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