「いざなぎ」ならぬ「ゆうなぎ景気」に思う。

 10月12日、大田経済財政大臣は月例報告において、日本の景気拡大が2002年2月以降続いており、戦後最長の「いざなぎ景気」(神武景気よりも、岩戸景気よりも良かったという)に並んだとしました。そして、「『期間中の経済成長率が2%台と低く、物価下落が続くデフレ下での回復だったため、実感に乏しい』とした。そのうえで、『日本経済の競争力をさらに高め、持続的な回復になるように政策を進める』と述べ、構造改革路線を推進する考えを強調した」(日本経済新聞)としたそうです。

 この「いざなぎ景気」を上回る「景気拡大」とはいったいなんなのでしょうか? 私たちにはとても景気が拡大しているなどという感じがありません。

 つぎの二つのニュースはこの「景気拡大」と対照的です。
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上半期倒産8.4%増、中小企業で悪化 帝国データ調べ
2006年10月16日23時06分
 帝国データバンクが16日発表した06年度上半期(4~9月)の企業倒産集計では、法的整理による倒産(負債1000万円以上)は、全国で4457件で前年同期比8.4%増えた。一方、負債総額は2兆5446億円で同4.3%減った。大型倒産は減ったものの、負債5000万円未満の小規模倒産が増えたためだ。景気回復が長く続いても、中小・零細企業、地方企業の業況はなお厳しいことをうかがわせている。
(朝日新聞社のサイトから)
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派遣労働者の受け入れ企業、過去7年間で倍増
 企業がリストラを進める一方で受け入れを増やしてきた派遣労働者について、受け入れ企業が過去7年間でほぼ倍増していることが16日、厚生労働省の調査で分かった。
 厚労省は、企業がバブル崩壊後に積極的に進めてきた人件費削減の流れに加え、労働者派遣法の改正で派遣労働の対象が広がったことが背景にあるとみている。
 調査対象は、2006年1月1日現在で、従業員30人以上の民間企業で、4416社から回答を得た。
 それによると、派遣労働者を受け入れている企業は全体の36・7%で、前回(1998年末)の20・3%の倍近くとなった。正社員に対する派遣労働者の割合も12・4%で、正社員の1割以上にものぼる派遣労働者が働いている実態も明らかになった。
 業種別では、金融・保険業が71・5%で最も多く、不動産業55・3%、情報通信業52・1%が続いた。(以下略)
(2006年10月16日23時4分 読売新聞)
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「景気拡大」「好景気」の背景で、企業は徹底的な人件費削減を行っています。それは派遣労働者やパート・アルバイト労働者の大幅な受け入のみならず、それは明らかに違法な偽装請負やタコ部屋労働ともいえる「研修生」の利用など、ありとあらゆる手段を用いてなされているのです。
 また、パートや派遣労働者という、いわゆる「非正規」労働者ではない正社員たちにしても、多くの人はこの10年間に驚くほどの減給に遭っています。労働者は、労働時間が増えつつも貧しくなっているのです。
 しかし、政府は厚顔にも「いざなぎ」を超える景気だというのです。日本経済の現状を「いざなぎ」景気(建設国債の発行による空前の好景気)と比べること事態無理無体なことなのに・・・・。

 一方、大企業が徹底した人事政策によって持ち直したとしても、中小零細企業が倒産の危機にあえいでいることは、倒産件数の増加が示しています。
 「格差社会」といいます。少し前までは「勝組」「負組」という言葉もマスコミを騒がせました。しかし、「勝組」など労働者の中にはいません。マスコミで騒がれていた「勝組」の有名人の多くはいまや刑事犯となっています。ある意味では、ここ数年間日本は勝ってもいないのに「勝った、勝った」と負けを認めない、本来の意味での「勝組」(ブラジルにおける日本の第二次大戦での敗戦を信じなかった人たちのこと)の幻想を作り上げていたのかもしれません。

 ところで、このような労働者の総貧困化現象を演出したのは政府の政策だけではありません。労働組合の無力化・御用組合以下の隷属化状態も、大いに「貢献」しています。税金を湯水のように私した岐阜の公務員の組合などは論外として、労働者が苦しんでいるのに、企業に異を唱えない労働組合、進んで賃下げや偽装請負労働、いんちきな外国人研修を容認してきた大企業労働組合の責任は重大です。労働組合が労使協定で企業と取引して労働者の生活を破壊してきたという現実(ユニオンショップ制の労働組合が無ければ、個々個人の労働者は労働条件の不利益変更で裁判も出来るのに、労働組合が認めてしまってはかなり難しいという現実)は見過ごせないのです。
 
 ところで、現在の「好景気」いったいなんと名付けたら良いのでしょうか?
 
 ゆうなぎ景気? 風が止んで静かな感じがするけれども、その後は暗い夜になる。

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