外国からの「研修生」をめぐる、企業・業界の法律違反問題について考える

本日(9月2日)の二つの新聞記事に関して思うところを述べます。一つは今年8月18日に千葉県で発生した中国人研修生による社団法人千葉県農業協会理事と中国人通訳などに対する殺傷事件の続報。もう一つはトヨタ系列企業で発覚したベトナム人研修生を不法な低賃金での使用した問題。

 ※外国人研修生問題ネットワーク→http://www.tonan.jp/trainee/

千葉県の事件は当初から「研修生」の名目で単純労働を超低賃金で行わせていたことが、事件の背景として指摘されていました。朝日新聞は本日付けで次のように続報しています。
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(前略)研修先の養豚場主によると、容疑者は4月の来日後すぐに休日も働き始め、残業が月50時間を超えることもあった。養豚場主には「来日前、中国で100万円ほどの借金をしてきた」と話していたという。 計画に沿って作業を学ぶ研修制度では、時間外や休日の研修は基本的に認められない。(中略・残業分時給を)450円にした理由についても、同じ協会幹部から「研修生間で格差が生じるので、450円以上でも以下でもだめだと言われた」。 この養豚場主は7月、6万5000円の正規の研修手当を口座に入金し、主食補助の5000円は現金で手渡す一方、約2万5000円の残業代は別口座に入金したという。 「通帳を一つにすると残業代の入金がわかってしまい、入国管理局に残業がばれる。だから残業代は別の通帳にするように協会側からいわれた」 。同協会を通じて研修生を受け入れた同県内の複数の農家も朝日新聞の取材に不正残業を認めている。(以下略)
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また、トヨタ系列企業による不法な研修生労働については、本日付けの東京新聞が伝えています。
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トヨタ関連23社違法雇用 法定賃金守らず
トヨタ自動車(愛知県豊田市)の下請け企業23社が法定の最低賃金や時間外割増賃金を守らずに約2百人のベトナム人を雇用していたとして、豊田労働基準監督署から労働基準法などに基づいて是正勧告を含む強い指導を受けていたことが2日、分かった。ベトナム人はいずれも「技能実習生」として受け入れており、未払い賃金の総額は5000万円余りとみられる。(中略)指導を受けたのは豊田市の自動車シート部品製造会社など。23社のうち22社が集まって組織する事業協同組合も対象となった。いずれもトヨタの直接取引先に部品を納入する二次下請けか三次下請けで、従業員50-150人。全国の労働局は労基法に基づいて地域や業種ごとに最低賃金を決めており、外国人の技能実習生にも適用される。愛知県の地域別最低賃金は一時間六百八十八円、産業別賃金は業種により金額が異なるが、地域別最低賃金より高め。時間外労働の賃金は二割五分増し。しかし、これらの企業は業種や就労実態を問わず1カ月12万2千円の統一賃金を取り決めていた。時間外労働もほぼ常態化していたが、賃金の割り増しもしていなかった。ある企業の場合、産業別最低賃金は807円だが、統一賃金と労働実態から割り出した時間当たりの賃金は702円。時間外労働についても、少なくとも1時間1009円に対し、半分以下の450円しか支払っていなかった。(中略)これらの企業は2001年秋からベトナム人の受け入れを始めた。ここ数年は年間50-60人規模で推移しており、日本人労働者の不足を実質的に補っている。
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研修生という名に隠された法を無視した超低賃金労働がまかり通っています。それは、人手不足に悩む農業・漁業から大企業系列会社までの日本の産業全体に広がっているのです。しかも、これらの「研修生」の不法労働問題には、業界団体や公益法人が介在し組織的に行われているわけです。個々の事業主が行う労基法違反よりも、ある面でより悪質であり、深刻な問題なのです。

さすがに、最近は厚生労働省も連合(その主力組合の一つであるトヨタの組合は、この研修生問題や先に問題になった偽装請負問題をきちんと対象化できていません)もこの問題に目をつぶることができなくなりましたが、そもそも、まじめに働いてきた外国籍労働者を「不法就労」として排斥する一方で、中国やベトナムという「社会主義」圏から、組織的に「研修生」労働者を、低賃金労働者として大量に日本で就労させたのも日本政府なのです。そして「研修生」の法律違反の低賃金労働が日本全国で、それこそ「不法労働」として行われ続け、ついにはそれが社会的矛盾として表面化してきたのです。

解決策は一つしかありません。研修とか実習とか名乗る「低賃金労働」を直ちに廃止すべきです(本当に「研修」や「実習」が必要な場合は、それこそ国で最低賃金を保証した上で、福利厚生を保証して受け入れるべきです)。

また、数年前から恐ろしい勢いで続けられている、入管当局による「外国人労働者狩り」(実際は、日本でまじめに働らき、市民生活を送っている良質な外国式労働者が排斥され、「犯罪」関係者には全く打撃がありません)をやめて、一定の期間働いている外国籍労働者を「日本の労働者」として認めるべきです。

全ての労働者に法的権利を保障してゆくことこそ、日本の労働力問題を根本的に解決する道なのです。

※政府関係者あるいは経済界の意見として「経済特区」を作り、安価な労働力を受け入れるとの構想があるようですが、これは人権と労働基準のダブルスタンダードを作るだけであり、研修生のみならずに、広く不法な低賃金が波及するおそれがあります。

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この記事へのコメント

きょう
2007年01月20日 22:46
はじめまして。
古い記事にコメント書くことをお許しください。
たまたま、このブログが目にとまりました。
わたしは、この協会のことをよく知る人間です。
確か、事件があった日の夜10時くらいだったと思います。
ニュース速報でこの事件が流れました。
正直、びっくりしました。
わたしはこの協会の職員と仲がよかったので、すぐ連絡をとりました。
お亡くなりになった役員さんや怪我をされた通訳の方とも顔見知りです。
この事件が起きるまで、わたしはこれは国際交流の一貫だと信じていました。
もちろん、収入目的で研修生の方が来てることは知っていました。
そして受け入れているほうも、労働力の確保という意味があることも知っていました。
それでも、研修生が方々が来日した際と、来日前にある程度の日本語教育や
生活習慣を勉強していたりしていたりしました。
きょう
2007年01月20日 22:46
つづきです。
研修生の方は真面目に働いて(わたしの知る限り)、受け入れ先の人たちとも
うまくやっていたと思います。
その結果、日本人の方と結婚された方も何人もいます。
この協会はきちんと日本語教育もし、
規定のとおり研修旅行や、定期的な日本語研修もしていたと記憶があります。
決して悪い面ばかりではないので、。
協会関係者の人たちも事実を知らない人もたくさんいたと思います。
事実、わたしも事件後にはじめて知ったことがたくさんあります。
事実を知らず、国際交流と信じてがんばってきた職員の方も知っています。
いきなりの書き込みごめんなさい。
少しだけ、ご理解いただければと思います。
通りすがり
2007年01月22日 11:56
その協会で働いている人たちの残業代とか、年次有給休暇あるいは、社会保険は大丈夫? 善意やボランティアに支えられている団体では、労基法無視が起こりがちだけど・・・。
きょう
2007年01月22日 15:16
通りすがりさんへ

社会保険はきちんとついていると思います。
県の規定にのっとって社保完備です。
もちろん有給もです。
ただ、有給がすべて消化できるかどうかは別ですが。
(それはどこの会社も同じだと思います。)
残業代は残念ながら出ていません。
休日出勤は当たり前で、代休すらとれない状態だと思います。
そうしないと運営が回らなかったと思います。
2007年01月22日 23:10
研修生をめぐっては、「研修」という名の下で、実際は労働力不足を補う労働が行われ、労基法や労安法を守らない労働が横行しているという現実があります。これは明らかに不法です。「きょう」さんの言によると、協会でも賃金未払いの不法が罷り通っているようですが、問題は国際協力、経済協力の美名のもとで、このような状態が生まれていることです。研修生問題については、送り出す側の国の問題も大きくありますが、多くの「善意」を踏み台にして、不法・法律のダブルスタンダードが罷り通ってしまう現状は直ちに改められなければなりません。国際協力・経済協力事業が労働者の権利剥奪や人権侵害を伴うというのでは、本末転倒と言わざるを得ません。
きょう
2007年01月23日 21:54
ならんはさんへ

わたしのコメントにお返事ありがとうございます。
ここの協会は2種類の研修生事業をしていたと記憶しています。
一つはわたしが前に書いた研修生の事業で、もう一つは善意に基づくのみの研修生事業です。
この事業はたしか日本人が海外に研修や留学で農業の勉強をした人たちが、
相手国の研修生を受け入れる制度だったと思います。
もちろん自分の農場で働きながらの勉強ですが、
この人たちは受け入れるほうも来るほうも純粋に勉強と留学です。
そういう研修制度もあることを知ってもらえたらいいなと思っています。
そして、それを支えるために懸命に働く職員や善意の関係者もたくさんいます。
傍聴人
2007年03月27日 12:26
千葉県農業協会の事件については、労働情報の最新号に「『外国人研修生殺人事件』その後を追う②」として取り上げられていますね。
これ読むと、「研修生制度」が形だけのもので、その陰で大儲けしている人間がいることが分かりますね。
以下、少しだけ引用します。
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前出・農業協会関係者が続ける。
「実はこの構図は最近になってわかったことなのです。協会といっても、常駐する事務局員は二人しかいませんし、常務理事が事実上のボスですから、だれも金の流れを問い質すことができなかった。(中略)もちろん薄々と理解していた農家もあったようですが、(中略)皮肉な話ですが、崔君の事件によって初めて、金の流れをつかむことができました。
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研修生も農家も「そろってむしり取られていた」ということのようです。

いやはや。

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